スナップドラゴン888とは?特徴や性能などを詳しく解説
Qualcommは独自イベント「Qualcomm Snapdragon Tech Summit 2020」を開催し、ハイエンド市場向けの新型SoC(System-on-a-Chip)「Snapdragon 888 5G Mobile Platform」(以下、Snapdragon 888)を発表しました。従来製品に比べて大幅な性能向上を実現しており、Qualcommは「テレビやカメラ、そしてゲーム機をスマートフォン1つに収められるのがSnapdragon 888だ」とアピールしています。
Snapdragon 888は、5nmプロセスで製造され、CPUコア「Kryo 680」や「Adreno 660」などを集積しています。この新型SoCは、前世代の「Snapdragon 865 Mobile Platform」(以下、Snapdragon 865)と比べ、グラフィックス性能が最大35%向上しています。さらに、Snapdragon 865では外付けモデムで5Gに対応していましたが、Snapdragon 888は5G対応モデム「Snapdragon X60 5G Modem-RF System」(以下、Snapdragon X60 5G)を内蔵しているのが特徴です。
この新しいプロセッサにより、単独でテレビやカメラ、ゲーム機の機能を備えたスマートフォンが実現されます。Snapdragon 888の登場により、スマートフォンの性能と機能がさらに向上し、より多くのユーザーに高品質なモバイル体験を提供することが期待されています。
長時間駆動でも性能が低下しにくいSnapdragon 888
ゲーム用途において特に重要な要素であるGPUコアは、新たにAdreno 660に変更されました。Qualcommは詳細を明らかにしていませんが、Snapdragon 888は前世代のSnapdragon 865と比べて、レンダリング性能が35%向上し、電力効率も20%改善されているとしています。
Snapdragon 888において、Qualcommは「長時間の駆動でも安定した性能を発揮できる」と主張しています。競合製品は長時間の連続動作により性能が低下することがありますが、Snapdragon 888は安定した性能を維持できるとしています。Qualcommの調査によると、モバイルゲーマーは週に6時間以上ゲームをプレイしており、特に若い世代のゲーマーは1日1時間以上プレイしています。これにより、長時間にわたって安定した性能が求められているため、Snapdragon 888の優位性が強調されました。
また、CPUコアのKryo 680は、4基の高性能コア(big側)と4基の低消費電力コア(LITTLE側)を組み合わせたbig.LITTLE構成を採用しています。Kryo 680では、big側の高性能コアのアーキテクチャが刷新されており、4基のうち特に高い周波数で動作する1基の「Prime Core」がArm製のCPU IPコア「Cortex-X1」に、そのほかの3基がArm製の「Cortex-A78」へと変更されています。これにより、性能が25%向上し、電力効率も25%改善されています。
Snapdragon 888のこれらの改良により、モバイルゲーマーにとって、より高性能で安定したゲーム体験が提供されます。高い処理能力と効率的な電力管理を実現することで、Snapdragon 888はゲームプレイのパフォーマンスを大幅に向上させています。
ゲーム向け機能群「Elite Gaming Features」の新機能
Snapdragon 888には、上位モデルに搭載されるゲーム向け機能群「Snapdragon Elite Gaming Features」が含まれています。この機能群には、新たにタッチ操作の遅延を軽減する「Qualcomm Game Quick Touch」(以下、Game Quick Touch)と、「Variable Rate Shading」(VRS, 可変レートシェーディング)が追加されました。
Qualcomm Game Quick Touch
Game Quick Touchは、ディスプレイにおける垂直同期のタイミングやフレーム送信のタイミングなどによる操作遅延を軽減する機能です。Qualcommによれば、画面をタッチしてからその結果が表示されるまでの処理を最適化することで、操作遅延が最大で20%軽減できるとしています。これにより、タッチ操作がより直感的で反応が速くなり、特に反応速度が重要なゲームプレイにおいて大きな利点を提供します。
Variable Rate Shading(VRS)
VRSは、すでにPC向けのGPUやゲーム機に実装されている技術です。シェーダで計算するピクセルの解像度を必要に応じて変更しながら描画することで、画像処理の負荷を軽減します。これにより、必要な部分にのみ高解像度のシェーディングを適用し、その他の部分では解像度を落とすことで、全体のパフォーマンスを向上させます。Qualcommによれば、VRSの実装により最大30%の性能向上が期待できるとしています。
Elite Gaming Featuresの効果
これらの新機能により、Snapdragon 888はゲーマーにとってさらに魅力的なプラットフォームとなります。Game Quick Touchによる操作遅延の軽減は、特にフレームレートが低い状況で効果が出やすく、快適なゲーム体験を提供します。また、VRSによる性能向上により、高品質なグラフィックを維持しつつ、スムーズなゲームプレイを実現します。
Snapdragon 888のこれらの強化により、長時間のゲームプレイでも安定した高性能を維持できることが強調されており、モバイルゲーマーにとって非常に魅力的な選択肢となっています。
5GモデムをSoCに統合
Snapdragon 888に統合されたSnapdragon X60 5Gモデムは、Qualcommの第3世代5Gモデムであり、ミリ波とsub-6の両方に対応しています。また、FDDおよびTDDでの5Gキャリアアグリゲーションをサポートしており、下り最大7.5Gbps、上り最大3Gbps(いずれも理論値)という高速通信を実現します。
Snapdragon X60 5Gモデムの特徴
- ミリ波とsub-6の両対応: 幅広い5Gネットワーク環境に対応し、高速かつ安定した通信を提供。
- キャリアアグリゲーション: 複数の周波数帯を組み合わせることで、通信速度をさらに向上。
- 高速通信: 下り最大7.5Gbps、上り最大3Gbpsの理論値を達成し、超高速なデータ通信を可能に。
FastConnect 6900
Snapdragon 888には、無線通信用チップ「FastConnect 6900」も統合されています。このチップは、6GHz帯の電波を利用する最新の無線LAN規格「Wi-Fi 6E」に対応しており、より広い帯域幅と低遅延を実現します。
デモンストレーション
Qualcommのイベントでは、本社キャンパスにレース場を作り、ラジコンカーで対戦するビデオが披露されました。このデモンストレーションでは、5Gのミリ波を使ってラジコンに搭載したカメラの映像をリアルタイムにストリーミングし、遠隔から操作する様子が紹介されました。5Gの高速・低遅延の特性を活かし、スムーズかつリアルタイムな操作が可能であることが強調されました。
これにより、Snapdragon 888は、高速なデータ通信と安定したネットワーク接続を提供し、次世代のモバイル体験を支える強力なプラットフォームとして位置付けられています。
まとめ
Snapdragon 888は、Qualcommが2020年に発表したハイエンド市場向けのSoC(System-on-a-Chip)で、従来製品に比べて大幅な性能向上を実現しています。以下は、Snapdragon 888の特徴と性能の詳細です。
性能向上と技術革新
- 製造プロセス: Snapdragon 888は、5nmプロセスで製造され、前世代のSnapdragon 865よりもグラフィックス性能が35%向上しています。
- CPUコア: Kryo 680コアを採用し、4基の高性能コア(big側)と4基の低消費電力コア(LITTLE側)のbig.LITTLE構成を持ち、特に高い周波数で動作する「Prime Core」はArmのCortex-X1、他の3基はCortex-A78を使用。これにより、性能が25%向上し、電力効率も25%改善されています。
- GPU: Adreno 660を搭載し、レンダリング性能が35%向上し、電力効率も20%改善されています。
長時間駆動での安定性能
- ゲーム性能: Snapdragon 888は長時間の連続動作でも性能が低下しにくく、安定した性能を発揮します。Qualcommの調査では、モバイルゲーマーは週に6時間以上ゲームをプレイしており、特に若い世代のゲーマーは1日1時間以上プレイするため、長時間の安定した性能が求められています。
ゲーム向け機能
- Elite Gaming Features:
- Game Quick Touch: タッチ操作の遅延を軽減し、最大20%の操作遅延を削減。特に反応速度が重要なゲームプレイに有利です。
- Variable Rate Shading (VRS): 必要に応じてピクセルの解像度を変更し、画像処理の負荷を軽減。これにより、最大30%の性能向上が期待できます。
5Gモデムの統合
- Snapdragon X60 5Gモデム: 第3世代5Gモデムを内蔵し、ミリ波とsub-6の両方に対応。FDDおよびTDDでの5Gキャリアアグリゲーションをサポートし、下り最大7.5Gbps、上り最大3Gbpsの高速通信を実現します。
- FastConnect 6900: Wi-Fi 6Eに対応し、6GHz帯の電波を利用することで、広い帯域幅と低遅延を提供。
デモンストレーション
Qualcommのイベントでは、5Gのミリ波を使ったリアルタイムのラジコン操作のデモが行われ、高速・低遅延の特性を強調しました。このように、Snapdragon 888は次世代のモバイル体験を支える強力なプラットフォームとして位置付けられています。
Snapdragon 888の登場により、スマートフォンの性能と機能がさらに向上し、高品質なモバイル体験を提供することが期待されています。特にゲーム用途において、高性能で安定したパフォーマンスを発揮し、ゲームプレイの快適さを大幅に向上させています。